小中高生だけが販売権をもつ雑紙をつくろうとして創刊号までたどり着けなかった話

探究&実験レポート

こんにちは。加藤路瑛です。12歳で起業し社長となった僕の挑戦(実験)とその結果を公開していくメディアTANQ-JOBです。

今回の挑戦は「雑紙事業に挑戦してみた!」という話です。ネット社会の今は、紙に印刷した雑紙はなかなか売れないそうです。「情報」というものはネットにあふれかえっています。わざわざ雑紙で買わなくても、読むことができてしまいます。

そんな中でなぜ雑紙事業に興味をもったのかお話したいと思います。

子どもの挑戦を応援したい

僕のビジョンは当時、【子どもを理由に「今」をあきらめない社会をつくる】でした。子どもの挑戦を邪魔する年齢やお金、常識をぶっ壊すことをしたいと思って、いろいろな事業を企画したり挑戦したりました。

  1. 子どもの挑戦を紹介したり、大人の挑戦を紹介することで子どもが挑戦しやすい社会にしたいという狙いで作ったメディアTANQ-JOB
  2. 子どもが挑戦資金を獲得できることを狙って作ったU-18専用のクラウドファンディングのプラットフォーム「Crystalroad」

この2つの挑戦の顛末は以下の記事をご覧ください。

ホームレスが販売する雑誌「ビッグイシュー」にインスパイアされて

基本、僕の軸は【子どもが挑戦しやすい社会にすること】です。そのためのメディア運営であり、クラウドファンディング事業だったのです。

その両方を僕の力不足で方向転換が必要だった時に思い出したのが、雑紙「BIG ISSUE」です。

雑紙ビッグイシューはホームレスが販売権を持つ雑紙です。1冊180円で仕入れ300円で販売する。その差額がホームレスの方の利益になるのです。

この仕組みを知ったのは起業する前ですが、心に残っていました。そして、ある日「子どもだけに販売権を持つ雑紙を作れないかな」と思ったのです。

  • 挑戦する子どもを紹介する雑紙
  • 雑誌にはQRコードを貼って記事になった小中高生やライターなどに投げ銭できるようにする
  • そして販売できるのは小中高生のみ
  • 売り上げの一部を子どもの貧困支援をしている団体に寄付する

そんなアイディアが湧き上がり、構想を始めます。

思いついたら即行動

大枠を考えてTwitterで仲間を募集しました。たくさんの方が反応してくださり、20人以上のグループができました。

また、東京の世田谷区で開催されるイベント「せたコン」にも参加して、雑誌事業をすすめるためのアイディアをもらいも行きました。

また、僕が構想を話す動画を取ってくださる方、出版社の編集の方を紹介してくださり、紙の印刷のコストや広告費について教えてくださった方、ライターやカメラマン、編集に立候補してくださった方、取材相手を繋げてくださった方、寄稿を快諾してくださった方など、協力してくれた人がたくさんいます。

創刊に向けて

創刊号の表紙デザイン案はできていました。さらにデザインコストを抑えるため、毎回つかえるようなフォーマットをデザイナーさんに作っていただきました。

創刊号は2020年4月頃と決め、紹介する小中高生の出演オファーも済ませOKをもらっていました。

課題はありました。

  1. お金の問題(コスト、スポンサー、収益)
  2. 子どもにだけ販売権がある事業で参加したい子どもがいるかの予測ができない

この2つが大きな課題でした。

スポンサーをお願いするために企画書を作って、いろいろな人にお願にいったり、相談にいきました。

「お金を出す」とはっきり言ってくれる人はなかなかいませんでした。スポンサー枠は創刊までに埋めるつもりでいましたが、創刊時にはクラウドファンディングをしてリターンを雑誌にしようと計画もしました。

でも、「何か違うのではないか」という気持ちを抱えたまま動いていました。

いつも相談にのってくれる経営者の方に相談に行きました。

「悪くはないよ。1発目は珍しさもあってなんとかなる。メディアでも取り上げられるだろう。でも、その先は?一発屋にならないか?販売したい子どもがいないか聞いたら、みんな「やりたい」って言うと思う。でも、口だけでなく、その雑誌を自分のお金で仕入れてまで絶対やりたい人がいるか探してみて。30人いるなら、可能性はある」

そう言われて考えてたのです。確かに一発屋にはなれる。子どもだけが販売権を持っていて、イベントやメルカリで売っている。その様子をニュースで取りあげらて、子どもを応援しようと思う大人は買ってくれるだろう。でも、2号、3号と継続してくれるか?記事の内容だって、挑戦している子どもの紹介や教育コンテンツを企画していて、質だって悪くはないと思う。でも、すでにある教育系の雑誌以上の価値を提供できるかといえば、自信がもてなかった。

ネットの中に情報はあふれている。雑誌の価値、メディアの価値はどこにあるのか?創刊号だけ終わってしまった雑誌やフリーペーパーも少なくない。生き残るためには何の価値を提供すればいいのだろう。

悩むともう答えは見えなくなってしまいました。

雑誌とは

ビッグイシュー日本版の創業者からアドバイスのメッセージをいただきました。

「本は何らかのテーマや知識についての”缶詰”だとしたら、 雑誌は作る人が何をしたいのかをなるべくはっきりと伝える”なまもの”のようなものではないでしょうか」

雑誌は作り手の意思表示ができる「なまもの」なのなら、僕もできると思っていました。ビジョンや志があれば、いつか伝わる。

それでいいと思っていたのに、僕は、創刊の決断ができなかった。

どう想像しても一発屋になる気がしてならないのです。

子どもが経営を学べる教材として

雑誌「Crystalroad」は子どもだけが販売権を持ちます。30冊3000円で仕入れて、自由価格で販売します。何冊仕入れて、いくらで売って、どこで売るのかを考えるので、経営の勉強を実践で学べます。

僕はこども起業塾の少し勉強して、商店街のお祭りで模擬店を出すという形がどうしても起業塾とは思えず、もっと主体的に学べる方法があればいいのにと思っていました。雑誌の販売は自分で考えられるから実践的だと思いつつも、「与えられた感」があって、そこが違和感でした。やっぱり、自分で商品を生み出して、商品を売る学びが大事であって、与えられた物を売るのは学びではないと思い、子どもが販売権を持つという方法を実行する決断ができませんでした。

また何人かの親に聞いてみたら

  • 子どもがやりたいと言うならやらせたい
  • 経営の学びができるのはすごくいい
  • 稼ぐ体験ができるのはいいね

という前向きな意見もありましたが、

  • 興味はあるが、子どもの販売に付き合う時間がない。それもまとめて面倒見てくれるならいいと思う
  • 習い事の1つとして考えるのはいいと思うけど、今の子どもは塾もあって忙しい

そんな意見もありました。子どもが雑誌を売る形式の競合は「習い事」のようなのです。そして、親も忙しいので、子ども起業塾に丸投げしたい気持ちも知ることができました。

小学生くらいまでは親と一緒に取り組むことになりそうですが、中高生は自分で売れると思います。イベントや学校の文化祭などによる販売やネットでの販売が想定されましたが、

・ネットで売って個人情報が出てしまうリスク
・知らない大人と販売のために直接会うことになるリスク

がありました。どんなに2人きりで会わないルールを作っても、会ってしまう可能性がある。それが犯罪や暴力に繋がることになって、きっかけが僕が作った雑誌になったら嫌だな、と思いました。

リスクは考えたらきりがないのですが、子どもを相手にする以上、考える必要があります。

見送ろう

2020年4月を創刊とし、準備を進めていましたが、4月創刊は中止、延期とすることを決断しました。2020年1月の判断でした。

理由は

  1. 一番はお金の問題(創刊号はなんとかなるけど2号以降の収益化を予測できなかった)
  2. 一発屋になりそうだった(ありがちな創刊号で終わりの雑誌になる可能性が高い)
  3. 子どもが販売者とすることの難しさ
  4. すでにリリースしていた『ChallrngeFun』で目的の一部は果たせれている

です。4番の「ChallengeFun」というメディアについて少し説明しておきます。

https://fun.crystalroad.jp/

このメディアは挑戦している人を紹介するメディアで、読んだ人が挑戦資金を投げ銭できるようにしていました。雑誌で挑戦者を紹介し、投げ銭できるQRコードを貼る予定でしたが、すでにネット上で実装済みなのです。そうなると、紙でコストをかけることが必要なのか迷ってしまいます。

「最初はお金をかけないではじめる」と「挑戦には投資も必要」という考えの中で揺れるのですが、以前、お金をかけて挑戦したクラウドファンディング 事業をクローズさせているので、お金をかけないでやることを優先するつもりではいました。(それでも、この時点で8万円くらいは使っていたとは思います)

まとめ

ここまで書いたことは全て言い訳です。実行できていない言い訳にしかすぎません。けど、けっして、完全撤退ではありません。「子どもの挑戦」「子どもの挑戦資金」という部分は僕のテーマの1つでもあり、これからも形や時期をかえて挑戦し、形にしていきたいと思っています。

もし、予定通り実行していて4月創刊だった場合。新型コロナウイルスの影響で、販売方法はネットに限られ、メディア取材もなくスタートし、スポンサー獲得にも悩まされていたと思います。

結果的に4月に創刊することはしなくてよかったのかもしれませんが、敗北感はあります。また進化させて取り組みたいと思っています。その一つが「ChallengeFun」というメディアなので、このメディアをどうしていくのがいいかも考えていきたいと思います。