「中学生社長が80万円かけて取り組んだ18歳以下限定のクラウドファンディング事業」の実験レポート(後編)

探究&実験レポート

こんにちは。中学生社長の加藤路瑛です。

2019年7月23日、18歳以下専用クラウドファンディング『Crystalroad』のβ版のサイトを公開しました。それから4ヶ月後の11月23日、『Crystalroad』は正式リリースすることなく終了させることにしました。

その顛末を包み隠さず公開します。

前編を読んでない方は先に前編をご覧ください。

クラウドファンディング「Crystalroad」β版公開!

18歳以下専用のクラウドファンディングサイトを作ろうと決意して約5ヶ月。2019年7月23日、ようやくβ版ですが、公開することができました。プロジェクト1号は僕自身のクラウドファンディングです。

テスト版なので、まずは僕がプロジェクトを立ち上げて、問題点を確認していくつもりでしたが、なんとバホ・レイさんが2人目の挑戦者としてプロジェクトを立ち上げることになりました。

レイさんは、以前、中学生の時に一人でアメリカ横断に挑戦し、Twitterで炎上したことがありました。僕もリアルタイムでそのツイートは見ていました。そのレイさんが今度はオーストラリア縦断に挑戦しようとしていました。旅費を支援してもらおうと、企業スポンサーを募集していて、それはホームページを作って募集していました。

順調に企業スポンサーが集まっていたら問題ないと思いましたが、集まってはいうないようでした。「個人向けのクラファンもしたほうがいいだろうな」と思って、声をかけてみました。

CAMPFIREでやってみるということだったのですが、出発日まで時間がなかったので急いだ方がいいお話はしました。CAMPFIREも掲載には審査がありますし、修正のやり取りもありますので、自分が公開したい日にすぐ公開できるわけではないからです。

そのようなやり取りをして、レイさんから、「クリスタルロードでやる」とご連絡がありました。テスト版で挑戦させてしまっていいのか少し悩みましたが、オーストラリアの出発日が迫っているので、やるならすぐに動いた方がよさそうでした。

しかし、レイさんも学校のテストが忙しく、プロジェクトの作成がなかなか進みません。

8月21日にオーストラリアに向けて出発することが決まっていましたが、プロジェクトを公開できたのは8月4日でした。8月16日までプロジェクトをやることにして、すぐに支援金をレイさんに渡すことにしました。決済会社から入金されていない金額もありそうでしたが、クリスタルロードで建て替えるつもりでした。

支援金は8万円でした。旅費のクラファンは支援が集まりにくい傾向にありますが、それでも僕の力不足でした。せっかくクリスタルロードで挑戦してくれたのに、満足できる結果を作ってあげられなくて申し訳なかったです。

これからもレイさんが挑戦する時は色々な形で応援したいと思っています。

魅力のないプラットフォーム

僕自身のプロジェクトは7月23日に公開し、9月22日まで支援を受け付けていました。プロジェクトの内容は運営するクラウドファンディングのサイトの運営費・開発費でした。100万円を目標金額にしましたが、根拠のある数字ではありませんでした。「100万円くらいなら集まるだろう」という安易な気持ちでした。

ただ、6月から7月にかけて、僕は出版クラウドファンディングEXODUSに挑戦しており、30日間で250万円のご支援をいただきました。ご支援されたばかりです。信用貯金も使った状態だったので、支援を呼びかけることにためらいもありました。

9月になり支援金は27万円で止まっていました。クラウドファンディング のプラットフォームとしては未熟なサイトです。このページで会員登録するのも、カード情報を入れるのも警戒した人もいると思います。

もしCAMPFIREで全く同じプロジェクトを立ち上げて27万円よりも多く集まったとしたら、それはプロジェクトの魅力の問題ではなく、プラットフォームとしての魅力のなさが問題なのだろう。今までCAMPFIREやポルカで合計400万円近くご支援をいただいていました。それは僕の力ではなく、CAMPFIREというプラットフォームの魅力とそこに集まる方の価値観によるものだと思いました。

でも、この時は、焦らず、ゆっくり、魅力と信頼を作っていければいいと思っていました。

事件は突然に

9月中旬、事件が起こりました。クリスタルロードのクラウドファンディングサイトでは、クレジットカード決済会社にStripeを使っていました。これは僕が決めたのではなく、プラットフォームのパッケージを販売している会社が指定していたもので、パッケージに組み込まれているものでした。

クリスタルロードでStripeのアカウントを取り、本番環境の申請やAPIキーなどの設定をするだけで、問題なく安全に決済できるものでした。

しかし、Stripeからアカウント停止の連絡が来たのです。「規約違反です」と。

ECサイトとしての利用であれば問題なかったのですが、プラットフォームとしてプロジェクトオーナー(会員)にお金を渡すお金のフローの場合、Stripeコネクトというものに加入し、キャッシュフローの全てをStripeが把握できる仕組みにする必要があるということでした。

ちょっとこの説明ではわかりにくいですね。

クラウドファンディング でのお金の流れ

(1)クラファンで支援してくれた人がカード決済してくれる。
(2)そのお金は決済手数料を引かれてクリスタルロードに入金される。
(3)クリスタルロードは、クラファン手数料を引いた金額をプロジェクトオーナーに送金する。

Stripeは(3)のお金の流れも把握したいようなのです。教える必要もないように思えますが、資金洗浄に使われる可能性もあり、金融法が厳しくなっている中では仕方がないことなのかもしれません。

僕は、Stripeの指示通りに修正しようと思いました。そんな難しい話ではないと思ったのです。

しかし、数人のエンジニアの方に相談してみましたが、「難しい」「解析に時間がかかる」「改修にはかなりの時間がかかる」と言われました。

この時、まだ僕のプロジェクトは支援募集中でした。支援金総額は27万円です。支援者の方の中には、僕が支援を呼びかけていなくて心配してくださる方もいました。僕が出版クラウドファンディング EXODUSで最終日の24時間で100万円の支援を集めたので、また逆転劇を狙っているのか心配してくれていました。もちろん、ラスト1週間は集中的に支援を呼びかけるつもりでした。

しかし、決済会社のアカウントが凍結している状態で、支援を呼びかけて、もしたくさんのご支援をいただきながら、その支援金を僕が受け取れなかったら・・・改修に時間がかかって支援金を受け取るのがずっと先になったら・・・

それはお金の問題より、応援してくれた人の気持ちを大切にできていないことになる。

そう思って、本当に悔しくて、苦しくて、嫌だったけど、僕のプロジェクトを早期終了させました。

「開発スケジュール」とか言ってるけど、そんなカッコイイものではなく、早く改修して、Stripeのアカウント凍結を解除しなければと思っていました。

支援してくださった方には、クリスタルロードのクラファンサイトのメッセージを利用して、事実をお伝えしていました。(ほとんどの支援者の方の支援金はすでに受け取っています。凍結によって受け取れなかった分に関しては、支援者の方に事情を説明して、返金させていただきました。)

ここからは急いで、対応できるエンジニアがいないか探しました。対応できる方も「かなり大変」ということで改修に時間がかかるし、コストとして50万円は必要ということでした。

すでに80万円投資した事業です。プラス50万か・・・と悩みました。すぐに回収できると自信を持って言える時期ではありませんでした。

やっぱり連絡するしかないか

相談した多くの方が、「それって、クラウドファンディングのパッケージを作った会社が無料で直すべきじゃないの?」という回答でした。

確かにそうなのです。パッケージを購入してStripeのアカウントがあればクラファンページが運営できると販売しているので、規約違反の商品を販売している会社が直すべきことだと思います。

しかし、以前のやり取りでボロクソに言われた相手なので、もう関わりたくない気持ちが強くて、避けていました。どんなやり取りがあったかは、前編をご覧ください。

他の利用している人もアカウント凍結になったら大変だし、ちゃんと伝えた方がいいということになりました。僕からの連絡は相手も不愉快だと思ったので、母が連絡することになりました。

その会社の方もStripeに連絡してみたそうですが、プラットフォームを運営する場合はStripe Connectを導入する必要があると言われたそうです。その会社でもConnectに対応したものに変更するよう検討すると言っていたそうですが、かなり大変な変更のため、いつになるかは分からないということでした。改修完了した場合、クリスタルロードは自分でカスタマイズしているので、その場合は有料で作業するという回答でした。

このやり取りが9月20日頃ですが、その後1ヶ月経ってから、12月頃に対応できるという連絡がありましたが、その改修案は僕の望むようなものではありませんでした。

プロジェクト起案者になる人たちもStripeのアカウントを取ってもらい、振込口座の登録をしてもらい、クラファンで集まったお金はStripeから入金されるというものでした。

クリスタルロードでクラファンがやりたい人は、Stripeという本人にとっては全く知らない会社に口座情報を伝えなければならない。僕だったら嫌です。クリスタルロードに伝えるのなら分かるけど第3者に提供しなければならないのです。

そして、この仕組みを導入してしまったら、クレジット決済以外の決済方法が導入しにくくなるし、別途振り込む必要が出てくる。

もし、このようなサービスの仕組みのパッケージが売っていたら、はじめから購入候補にはしなかっただろう。規約違反をクリアするための回避策としては仕方がないけど、ユーザー目線で考えれば、そのような不便な仕組みを取り入れることはしたくない。この場合のユーザーとは、クリスタルロードのようなクラファン事業者ではなく、そのプラットフォームを利用してくれるユーザーのことです。

自分がプラットフォーマーでありたいという自己都合ではだめで、絶対にユーザー目線でなければならないということを、この事業をはじめて強く感じたことでした。

プラットフォームという器

プラットフォーマーを名乗るなら、みんなが安心して使えるプラットフォームを提供しなかればならない。僕はその力がなかった。気づきたくなかったが、それが事実なのだ。僕には、まだクラウドファンディングのプラットフォームを運営する器ではなかったのです。

ただの仕組みを作るなら100万円くらあれば、見かけ上はクラウドファンディングのようなものは作れます。しかし、それは見た目や上辺だけのものなのです。

そして、改めてCAMPFIREやReadyForなどの大手のクラウドファンディングの会社はすごいと思いました。クラファン事業だけでなく、世の中にある多くのプラットフォームを運営している会社はすごいなと思いました。

僕は、自分のクラファンのプラットフォームを使った人々を幸せにしたいと思っていました。それがプラットフォーマーの役目だと思っていました。

しかし、自分でクラウドファンディング 事業をやってみて、「プラットフォーマーは公共の器」なのだと思いました。インフラに近いものです。TwitterやLINEのようなプラットフォームはすでに社会インフラのような存在です。ユーザーが幸せになるように運営していると思いますが、望まない使われ方をする場合もありますし、使って欲しくない人が使うこともある。そういう覚悟も必要になってきます。

僕は、自分が使って欲しいと思う人だけに使って欲しいという気持ちが大きく、まだ広く開かれたプラットフォームを運営する器ではないことを、痛いくらいに感じています。

お詫びとご連絡

18歳以下専用クラウドファンディングのサイトは正式リリースすることなく終了させます。

支援してくださった方には個別にご連絡させていただきました。リターンも実行できるものはすでに対応させていただきました。スポンサーとしてサイトに掲載しますというリターンだけが実行できないまま保留になっておりますが、他の方法でお返しをしますので、もう少しお待ちください。

また、プロジェクト立ち上げたいと14名の小中高生から問い合わせをいただいていました。プロジェクト文の作成も進めてくださっていた方もいらっしゃいました。お問い合わせくださっていた方にも個別に連絡させていただきました。その方々が、他のクラウドファンディングに挑戦される際は協力したいと思っています。

応援してくださった方、仲間になるよと声をかけてくださった方にも、中途半端な終わり方をして申し訳ございません。

でも、諦めたわけではない。次の事業へ。

18歳以下のクラウドファンディング 「Crystalroad」のサイトを終了しようと決断したのは、カード決済会社Stripeの問題がきっかけですが、きっかけであって、根本的な理由ではありません。

カード決済の問題だけを解決するならば、お金で解決できることでした。しかし、それは僕の目指したい形ではありませんでした。

クラファン事業をどうしていけばいいのか、僕の目指す世界に近くなるには何をしたらいいのか、トラブルを抱えながらずっと考えてきたのですが、ある日、急に思いつきました。

それはどんなものなのかは、近いうちに発表します!

僕の行動の原動力は、

年齢やお金を理由に「今」をあきらめなくていい社会を作ること

18歳以下のクラウドファンディング 「Crystalroad」のサイト終了は後退ではない。むしろ前進です。サイトは終了させますが、事業は終了していません。形を変えて、みんなが挑戦しやすい社会を作っていきます!

これから失敗もたくさんすると思いますが、諦めない限り「失敗」は存在しないので、まだまだたくさん実験(挑戦)します。

実験(挑戦)結果まとめ

ここまで話したように、僕は18歳以下限定のクラウドファンディング事業をしようと思い、実現に向けて行動しました。しかし、振り返ると以下の部分がダメだったのだと思います。

⑴すでに存在するクラウドファンディングのプラットフォームの仕組みと全く同じものを作ろうとしてしまった
(2)初期投資しすぎた
(3)最初からかっこよさを求めてしまった

既にあるものなら、新しく作る意味はないのです。既に存在している大手に勝てるものでもない。18歳以下に限定して市場を絞る作戦は悪くないと思いますが、はじめから完成形を目指してしまった。もっと小さく始めればよかったと思います。

「はじめはコストをかけず、小さく始める」

よく言われるアドバイスで僕も何度か言われたことがあるのに、お金をかければいいものができると思ってしまったように思います。ECサイトで支援者を募集してみたら?と言われたのに、それはかっこよくないと思ってしまったのです。

最初はかっこわるくていい。低レベル、アホと言われてもいい。まずはコストゼロで自分でやれる範囲でスタートすればよかったです。そこには「やっぱり中学生ならこんなもの」と言われるのが嫌だという無意味なプライドがあったように思います。中学生であることを武器にしながらも、中学生であることのコンプレックスを解消できないまま仕事をしていたのです。

そして、僕だからこそできることがあったはずだったのに、大人の真似になってしまったこと。ビジネスをやるなら真似は大事だと思います。でも、僕や僕の会社の価値は、大人の真似ごとをすることではないはずです。たくさんの大人と関わることで、どうしても大人社会に融合しようと無意識にしてしまったように思います。

これからは、世の中の価値観に引きずられることなく、形から入るのではなく、お金をかけず、かっこ悪くても「加藤路瑛」「クリスタルロード 」という表現をしたいです。そして、自分の器を知ること、自分の自己表現だけでなく、相手の自己表現を尊重・応援できるようにしたいです。

僕が目指す「応援経済」は、誰もが応援されるチャンスがあり、誰もが応援できる社会です。また別の形で、少しずつ進化させていきたいと思います。